JC08モード燃費はもう古い!新しく採用されたWLTCモード燃費は実燃費にどのくらい近づいたのか?
車のカタログを見るときに必ず確認する項目の1つとして「燃費」があると思います。
その燃費表記も、今までは「10・15モード燃費」や「JC08モード燃費」などでしたが、最近では「WLTCモード燃費」という表記が増えてきました。「WLTCモード燃費」とは一体なんなのか?
「JC08モード燃費」との違いなどを紹介します。
WLTCモード燃費とは?
WLTCとはWorldwide-harmonized Light vehicles Test Cycleの略で、3つの走行モードで構成された燃費の測定方法です。JC08モード燃費に変わる新しい測定法になります。
今まで国や地域ごとにバラバラだった燃費表記を、世界的に統一する目的もあります。
2017年の夏頃から日本に導入され始め、2018年10月からは国内で販売される車で表記することが義務化されました。
WLTCモード燃費は、主に3つの異なる状況(市街地、郊外、高速道路)をシミュレーションし、その結果を平均的な使用時間配分で構成した走行モードになります。
今までのJC08モード燃費では、表記される燃費は1つだけでした。
例えば、「JC08モード燃費:15.3km/L」の様に。
それがWLTCモード燃費では走行モード別に3種類、総合1種類の計4種類が表示される様になります。
例えば、自分がほとんど市街地しか走らない人であれば「市街地モード燃費」を見れば良いですし、
郊外の国道などをよく走る場合には「郊外モード燃費」を見れば良いわけです。
ユーザの運転状況に合わせた表記になり、より実燃費に近づいた表記となりました。
とはいえ測定は相変わらずのローラー(シャシーダイナモ)上で行われており、車の空気抵抗を考慮していません。ですからバンの様な前方投影面積が大きくCd値の高い車では高速道路では実際にはもっと燃費が悪くなるでしょう。反対に、流線型に近いフォルムの車ではもっと値がよくなると思われます。
3つの走行モード
3つの走行モード、それぞれの定義は以下の通りです。
市街地モード
信号や渋滞などの影響を受ける比較的定速な走行。
時速60kmまでを想定
郊外モード
信号や渋滞などの影響をあまり受けない走行。
時速80kmまでを想定
高速道路モード
高速道路などでの走行
時速100kmまでを想定
JC08モード燃費との違い
今までのJC08モード燃費は以下の様な表記でした。
JC08モード:21.4km/L
それがWLTCモード燃費では以下の様になります。
WLTCモード:20.4km/L
(市街地モード:15.2km/L、
郊外モード:21.4km/L、
高速道路モード:23.2km/L)
主な国産車はWLTCモード燃費の表記になることで、総合ではJC08モード燃費より悪くなる傾向があります。
例えばマツダ CX-3(SKYEACTIV-G2.0 2WD)の場合は以下の様になっています。
JC08モード:17.0km/L
WLTCモード:16.0km/L
(市街地モード:12.2km/L、
郊外モード:16.8km/L、
高速道路モード:18.0km/L)
一見すると、WLTCモードは16.0km/LとなっていてJC08モードよりも低くなっている様に見えます。
しかし、高速道路モードを見れば18.0km/Lとなっているし、逆に市街地モードでは12.2km/Lと大幅にJC08モードよりも悪くなっています。
WLTPとWLTCの違いとは?
今までWLTCモード燃費について見てきました。
ではWLTPモードとは何が違うのでしょうか?
WLTPとはWorldwide harmonized Light vehicles Test Procedureの略で、
WLTCよりも世界標準な計測方法になります。
具体的にはWLTCの3つの走行モードに、「さらに早い走行モード」を足したのがWLTPモードになります。
「さらに早い走行モード」とは時速130kmで走行するモードで、主にドイツのアウトバーンを想定しています。しかし、日本では一般道でそんな速度で走ることはないので除外されています。
それがWLTCモードとなっています。
燃費表記の歴史
自動車のカタログに記載される燃費表記は次々に変更されています。
そこで日本の自動車カタログにおける燃費表記の移り変わりを紹介します。
60km/h定速燃費(〜1991年)
日本で長い間表記されていた燃費モードで、時速60km一定で走行した際の燃費を表記していました。
しかし、実際の道路は信号や渋滞などで時速60km定速で走れる事はほとんどないために、実際の燃費とかけ離れていたので、より実態に即した10・15モード燃費に変更されました。
10・15モード燃費(1991年〜2011年)
市街地を想定した10項目の走行パターンに、郊外を想定した15項目の走行パターンを加えた燃費の計測方法。
測定条件
- エアコン OFF
- 搭載電気機器 OFF
- 車両(空車)状態+110kg(2名乗車分)
- 完全暖機状態 60km/h15分暖機後
- 3,000km慣らし走行後の車両
主な走行パターン
- アイドリング
- アイドリングから[一定速度]まで加速
- [一定速度]をキープ
- 減速して停止
この様に実施の交通ルールに合わせて、アイドリングから一定速度まで加速し、減速。
さらに一定速度まで加速して減速、など、加減速とアイドリングを組み合わせています。
問題点
試験の最高速度が時速70kmとなっていて、高速道路が考慮されていません。
さらに前提条件として暖機運転が終わっているために、暖気中の走行も考慮されていません。
(暖気中はガソリンを多めに燃やしているので燃費が悪くなります。その燃費が悪い部分をカットしているので実燃費よりも燃費が良い結果になります。)
JC08モード燃費(2011年〜2018年)
実燃費とかけ離れている10・15モード燃費の測定方法を、もっと実際の走行パターンに近い測定方法にしたのがJC08モード燃費となります。
10・15モード燃費と比べて平均速度が時速1.7km上がっていて、最高速度は時速81.6km、
測定時間は10・15モード燃費の倍近い約20分、走行距離も10・15モード燃費の倍近い約8kmを走行します。
もともと10・15モード燃費が実際の燃費とかけ離れていると非難されて、このJC08モード燃費になったわけですが、それでも実燃費はカタログの6割と指摘されていて、JC08モード燃費でさえも実燃費との乖離を指摘されていました。
ちなみに、2018年からWLTCモード燃費に切り替わることから、最も採用期間の短かった燃費モードでもあります。
10・15モードとJC08モードの燃費比較
車種 | 10・15モード | JC08モード | 悪化率 |
日産 セレナ | 15.4km/L | 14.6km/L | 94.8% |
マツダ デミオ | 30.0km/L | 25.0km/L | 83.3% |
ホンダ アコード | 14.4km/L | 13.2km/L | 91.7% |
ダイハツ ムーブ | 30.0km/L | 27.0km/L | 90.0% |
主な車種の10・15モードとJC08モードの燃費比較の表ですが、
車によってJC08モード燃費になった際の悪化率は違います。
最も悪化したのはマツダ デミオで10・15モードから83%に落ちています。
一方で、日産 セレナは5%程度しか落ちていません。
車の排気量やギア比などによって、その試験に得意不得意があるのかもしれません。
噂話
本当かどうかは定かではありませんが、ある噂話を聞いたことがあります。
新型車の燃費を計測するのはその車のメーカーの人が車を持ち込んで計測するらしいんですが、
各自動車メーカーには燃費計測担当のスペシャリストがいるらしいです。
一般的には燃費計測は決められたルールで加速や減速を繰り返すので、人によって変わらないという認識かもしれませんが、どんな試験にも穴はあります。
例えば「10秒かけて時速20kmまで加速する」という様な試験の状況だった時に、
ガバッとアクセルペダルを踏んで一気に加速するのか、じわーっと加速するのかでは燃費に差が出ます。
そういうことを各自動車メーカーの自前の計測機で訓練を受けた、いわば熟練の燃費運転手が担当していたのでは良い燃費が出るのは当然のことですよね。
世の中にはいろんなドライバーがいます。アクセルペダルの踏み方一つとったとしても、全然違います。
デジタルの「0か1か」の世界の様に、床までアクセルペダルを思い行きり踏み込んでは、足を離す、の2通りしか無い人も実際にいます。
そんないろんな運転手がいる中で、最も燃費良く運転できる人に合わせた燃費表示だとしたら、多くの人にとってはカタログ燃費が出ないのも当然に思えます。
一方で、日本車ほど燃費に力を入れてない輸入車なんかだと、意外と実燃費がカタログ燃費に近かったり、場合によっては簡単に超えてしまったりします。
日本車のカタログ燃費が実燃費とかけ離れているのは、もはやユーザにはバレてしまっていますし、
ディーラーマンに燃費を聞いても「大体カタログ値の6割くらいですね」なんてあっけらかんと当たり前の様に言われたりもしますよね。
激しい燃費競争で、0.1km/Lでもライバルより燃費が悪いと自動車の売れ行きに影響があるのかもしれませんが、買った後で「カタログ燃費に全然届かない!」といってユーザにがっかりされるよりも、むしろ「カタログ燃費を簡単に超えるんだけど!」という方がユーザは何か徳をした気がして喜ぶんじゃないでしょうか。
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